2024年の法改正、不動産売買に影響は?

2024年02月14日

2024年の法改正が不動産市場に

どのような変化をもたらすのか?

 

はじめに 2024年の法改正

2024年には、登記の見直しや、空き家対策の強化など、不動産に関する法改正が予定されています。これらの法改正は、不動産の売却や購入にどのような影響を与えるのでしょうか。不動産所有者が知っておくべきポイントとともに解説します。

2024年問題1

1章 2024年の法改正、不動産売買に関係のあるものは?

法改正は毎年行われていますが、多くは実務や実生活に直接関係しないものや、一般の関心を引くことが少ないため、改正されていることすら知られていない場合が多いです。

 

では、なぜ2024年の法改正が特に注目されているのでしょうか?

その理由は、改正内容が多岐にわたり重要な領域に影響を及ぼすためです。

 

特に、メディアやSNS、YouTubeなどでは「2024年問題」として、建設・物流業界の時間外労働の上限規制に関連する人材不足やコスト増加の懸念が示唆されています(一度は耳にしたことがありませんか?)

 

また、不動産業界では、相続登記の義務化、空き家の売却に関する税制優遇の変更など、重要な変更点が数多く含まれています。

 

これらの改正は、私を含め国民の家計に直接影響を及ぼす可能性が高く、不動産市場にも大きな影響を与えるため、専門家だけでなく一般の人々にとっても関心が高まっています。

 

そこで本記事では、2章から4章で、不動産売買に関連する3つの法改正を詳しく解説し、5章ではこれらの法改正を基に、どのような方法で不動産と向き合う必要があるのかを解説します。

(タワマン節税等一般消費者にあまり関係のないものは本ブログでは割愛させていただきます。)

 

2章 相続登記義務化
3章 空き家の譲渡所得3000万円特別控除
4章 働き方改革関連法案(2024年問題)

5章 売却?保有?マイホームが欲しい人は?
6章 まとめ

2024年問題2

2章 相続登記義務化

相続登記義務化は、日本の不動産管理において非常に重要な変更点です。多くの人々が「相続登記」という言葉を耳にすることはあっても、その具体的な意味や必要性を十分に理解しているわけではありません。この章では、相続登記の基本的な概念と、それが義務化されることによって不動産市場や個人の資産管理にどのような影響を及ぼすかを明らかにしていきます。

 

2.1「登記」とは?

そもそも登記とはいったい何でしょうか?

「相続」は聞きなじみがあるかと思いますが「登記」はあまり聞いたことがない方もいるのではないでしょうか?

「登記」とは…大事な情報や権利関係を公的な記録として残すことを意味します。

これには主に『不動産登記』と『商業登記』の二つのタイプがあります。

(辞書的な意味ではありません。興味のある方は辞書で調べてみてください。)

 

・不動産登記

土地や建物などの不動産の所有者が誰か、またその不動産にかかる権利(例えば、抵当権)があるかを正確に記録します。これにより、不動産の取引が安全かつスムーズに行われ、所有権のトラブルを防ぐことができます。

 

・商業登記

会社や法人がいつ、誰によって設立されたか、どんな変更があったか(例えば、役員の変更や住所の変更)を記録します。これにより、会社の信頼性や透明性が高まり、ビジネスの世界での取引が安心して行えるようになります。

つまり、「登記」という言葉は、大切なものや事柄を公的に記録して、それをみんなが確認できるようにするためのシステムを指します。このシステムによって、社会や経済活動が円滑に行われる基盤が作られているのです。

以下「登記」のことを不動産登記に関することとして解説していきます

 

2.2 相続登記について

相続は聞きなじみがあるかと思いますので簡単に説明しますと

「誰かが亡くなったときに、その人が持っていた財産や借金などを法律に基づいて家族や指定された人が引き継ぐこと」(相続についての解説は本記事では割愛します)

つまり相続登記とは引き継いだ不動産を法律に基づいて正式に次の所有者に名義変更する手続きのことです。

 

例えば、あなたのお父さんが亡くなって、実家をあなたが相続する場合、その家の所有者がお父さんからあなたに変わったことを、不動産登記簿に記録します。

本来であれば相続した段階で相続登記を行い所有者が変わったことを記録する必要があるのですが、今までは義務ではありませんでした。

 

しかし相続登記が義務ではなかったが故に多くの問題が発生しました。

その一つが、登記簿を見ても実際の所有者が分からないまま放置された空き地や空き家が日本全国で増加してしまったことです。

これらの空き家や空き地は、以下のような様々な問題を引き起こしています。

 

・管理の放棄: 所有者が不明確なため、空き家や空き地の適切な管理や維持が行われず、これが地域の安全性や環境に悪影響を与えています。

・地域社会への影響: 放置された空き家や空き地は、地域の景観を損ない、治安の悪化を招くこともあります。

・再活用の困難: 空き家や空き地の所有者が不明確な場合、それらの不動産を再活用するための手続きが複雑になります。例えば、新たな住宅や商業施設を建設する際に、所有者の同意が必要ですが、所有者が分からないと進めることができません。

 

※空き家問題について気になる方は以下の記事をご覧ください。

【空き家の放置、ちょっと待った!-税金増と法的責任でダブル苦-】

 

これらの問題に対応するため、2024年4月1日より相続登記の義務化が開始されます。

この義務化により、相続で取得したことを知った日から3年以内に適切な登記を行い、不動産の所有者情報を最新の状態に保つことが求められるようになります。

 

ちなみにですが、2024年4月1日よりも前に相続した不動産も対象となります。

 

2.3 義務化するとどうなるのか?

まず第一に相続登記を行わない場合、罰則が適用される可能性があります。

もし正当な理由なく3年以内に相続登記を行わない場合、10万円以下の過料が課される可能性があります。

正当な理由の例として

【相続人が非常に多く、戸籍関係書類の収集や他の相続人の特定に時間がかかる場合】

【遺言の有効性や遺産範囲が争われている場合】

【相続登記を行うべき人に重病や同等の事情がある場合】

などが想定されます。

簡単に言うと『相続で不動産を得て、理由なく3年以内に登記しないと罰金が科される可能性がある』ということです。

 

この改正の主要な目的は、単に罰則を設けることだけではありません。重要なのは、不動産の所有者を明確にし、市場における取引の透明性を高めることです。所有者がはっきりすることにより、空き家や空き地の有効活用や売却が容易になり、長期間放置された不動産が地域社会に及ぼす問題を防ぐ助けとなることが期待されております。

相続登記義務化

3章 空き家の譲渡所得3000万円特別控除

こちらも相続登記に続いて空き家問題から創設された特別控除で「空き家を相続等で取得し、売却した場合、譲渡所得から3000万円控除できる」制度です。

これは2016年度(平成28年度)から創設されましたが、使いづらい点があり問題となっていました。

そこで2023年に条件が緩和され、期間も延長する運びとなりました。

では、どういった特別控除が受けられるのか?また緩和された内容はどういったものなのか?を解説していきます。

 

3.1 改正前の適用条件

特例は、被相続人の居住用財産(空き家)を売却する際に、最大3000万円までの特別控除を受けられる制度です。

要は、空き家を売るときの税金が大幅に軽減されるわけです。

しかし特例を受けるためには「空き家の条件」と「特例を受ける条件」それぞれ満たす必要があり、

 

「空き家の条件」

・建物自体が昭和56年5月31日以前に建築されていること。
・建物が区分所有建物でないこと。(マンション等)
・相続開始の直前に被相続人以外の居住者がいないこと。(被相続人=亡くなった人、相続人=財産等を受け取る権利がある人)

 

「特例を受ける条件」
・相続または遺贈により取得した建物であること。

・相続または遺贈の取得から3年以内に売却していること。

・特別な関係(親子、夫婦など)がある人に対して売却していないこと。

 

上記以外にも細かな条件がありますが、なによりも相続人が相続した物件を「すぐに利用可能な状態」にしてから譲渡する必要がある点が非常にネックでした。

これは相続した家屋を建築基準法に則った耐震基準を満たすような耐震工事を行うことや解体して更地にすることを譲渡(売却前)に行う必要があり、売却できなかった場合のリスクや手間を考えると使い勝手の悪い特例と言えました。

 

3.2 改正後

1. 耐震関連の条件の緩和
改正前…空き家を売却する前に、建築基準法に則った耐震基準を満たすような耐震工事を行うか、解体して更地にする必要がありました。(相続人が売却前に対応しなければいけなかった)
改正後…要件が緩和され、古い建物でもそのままの状態で売却が可能になりました。これにより相続人にとって、売却までの手間やコストが削減されました。(前もって取り決めをすれば買主側が耐震工事や解体を行うことで対象となる。)


2. 売却期限の延長

改正前…令和5年12月31日まで
改正後…令和9年12月31日まで

 

3. 相続人が3人以上の場合

改正前…1人あたりの控除額3,000万円
改正後…1人あたりの控除額2,000万円

 

3.3 期待されること

相続人によってリフォームや解体等を行う必要がなくなったことと相続登記義務化も合わさり、空き屋の流動性が高まることが期待されております。

もし相続により不動産の相続をされた方又は相続する可能性のある方は是非活用することを検討してみてください!

 

 

★補足「そもそも控除とは?」★

税金を計算するときに、一定金額を差し引くことにより、税金の負担を軽減することを指します

 

控…ひかえる。さしひく

除…とりのぞく

 

つまり「○○控除」という制度は税金が安くなる制度なのでしっかりと活用したい制度です!

 

また税金を控除する方法としては

所得控除の「稼いだお金から引く」
税額控除の「払う税金から引く」

この2パターンに分けることができ「空き家譲渡所得3000万円特別控除」は「所得控除」に該当します。

つまり3000万円で売却しても「稼いだお金から引く」ことになるので譲渡所得は0円となります。つまりどれだけ税率をかけても0円となるのです(笑)

(分かりやすく表現しておりますが、取得にかかった費用等は差し引くことができます。)

空き家売却

4章 働き方改革関連法案(2024年問題)

2024年に施行される法改正で一番注目されているといっても過言ではない改正として「働き方改革関連法案」と言われており、運送・建設業界に大きな影響を及ぼすことが予想されます。この法案は、長時間労働の抑制と労働環境の改善を目的としており、特に建設業界においては大きな変革をもたらすでしょう。

 

4.1 法案の概要と不動産業界への影響

そmpそも働き方改革関連法案については2019年には施行されており、従来の日本的な働き方ではなく個々の働き方に合わせ多様な働き方を選択できるように環境を整備することを目的として施行されましたが、運送・建設業界等の一部の業界では5年間の猶予期間が設けられておりました。そのため2024年4月から本格的に施行になりますが、実際のところは猶予期間があったにもかかわらずほとんど改善できていないと言われており、2024年4月からの建築業界は以下の方で厳しくなると言われております。

 

残業時間の上限規制: 2024年から、建設業界を含む特定業種では、原則として月45時間、年間360時間以内の時間外労働が義務付けられます。しかしの工期や人材不足等の兼ね合いで長時間労働が常態化しており、是正が非常に難しいと言われております。長時間労働の是正を行うとすれば、現場の稼働時間が短縮される可能性が高く、工期の延長や長期化が予想されます。

 

・人材不足の悪化: どの業界でも人材不足と言われておりますが建築業界も深刻な人手不足が問題となっております。そこに労働時間が短縮されれば、さらに多くの労働力が必要になり人手不足に拍車をかけることとなります。

 

・コスト増加: 人手不足による労働時間の短縮は、工事の進行に遅れを生じさせるだけでなく、コストの増加にも繋がります。これは住宅購入者にとっては、より高いコストを意味する可能性があります。

 

これは運送業界でも同じで、建築資材自体が高騰しているなかで建築資材運搬の費用も高騰すると言われておりコスト増加が懸念されております。つまり新築住宅価格も働き方改革によって高騰し2024年以降は新築住宅の購入が難しくなるのではないか?と言われております。

働き方改革

5章 売却?保有?マイホームが欲しい人は?

2024年問題により、不動産市場は一層の変動を迎えています。この時期において、住宅を売却するか、保有し続けるか、あるいは新たにマイホームを購入するかという決断は、より複雑なものになっています。それぞれの選択が持つメリットとデメリットを、2024年問題の観点から見ていきましょう。

 

5.1 住宅を売却する場合
メリット: 2024年問題による建設コストの増加が住宅価格の上昇を引き起こす可能性があるため、現在の高い市場価格での売却は利益をもたらすかもしれません。
デメリット: 新しい住宅の購入コストも同様に高騰している可能性があり、望ましい物件を見つけることが困難になるかもしれません。

 

5.2 住宅を保有する場合
メリット: 住宅市場の不安定さを考えると、既存の住宅を保有することで、不確実性を避けることができます。
デメリット: 今後の市場価値の下落リスクがあり、特に建設コストの増加が新築住宅の魅力を高める可能性がある場合、既存住宅の価値は相対的に低下する可能性があります。

 

5.3 マイホームを購入する場合
メリット: 新築住宅のニーズが高まる可能性があり、新しい住宅への投資は価値を保持しやすいかもしれません。
デメリット: 2024年問題による建設コストの増加は、新築住宅の価格を押し上げ、購入費用が予想以上に高くなる可能性があります。

2024年問題に直面して、住宅市場の決断は以前よりも複雑です。市場の動向を密接に監視し、個々の財務状況と将来の計画を慎重に考慮することが不可欠です。

購入?

6章 まとめ

2024年問題によって生じる法改正は、不動産市場に大きな波をもたらすことが予想されます。この記事を通して、我々は以下の重要なポイントを学びました。

 

相続登記の義務化: これは不動産管理における重要な変更で、不動産の所有者を明確にし、市場の透明性を高めることを目的としています。これにより、空き家や空き地の有効利用や売却が容易になります。

 

空き家の譲渡所得3000万円特別控除: この特例は、空き家の流動性を高め、相続した不動産の売却を促進するために導入されます。改正により、売却までの手間やコストが削減されるとともに、売却期限の延長が見込まれます。

 

働き方改革関連法案の影響: この法案は、特に建設業界に大きな変化をもたらすと予想されています。長時間労働の抑制による人材不足やコスト増加は、新築住宅の価格に直接的な影響を及ぼす可能性があります。

 

これらの変化は、住宅を売却するか、保有するか、または新たに購入するかという決断に大きな影響を与えます。市場の動向を注視し、個々の財務状況や将来計画を慎重に考慮することが不可欠です。

最後に、2024年問題はただの法改正にとどまらず、私たちの生活に直接的な影響を与えるものです。そのため、常に最新の情報を把握し、適切な対応をとることが重要です。しかし誰に相談すればよいのか分からない。そういった不動産のお悩みはぜひ、弊社LIQまでご相談ください!

 

この記事が、不動産市場の変化を理解し、後悔のない決断を下すための一助となれば幸いです。

まとめ